Raphael Live 2016「悠久の檜舞台」第弍夜黒中夢2016/11/1 @ Zepp Tokyo(日本語バージョン)

音楽と癒しを司る天使・Raphael。1997年、YUKI(Vo.)、華月(Gt.)、YUKITO(Ba.)、そしてHIRO(Dr.)、まだ16歳だった少年たちがRaphaelを結成し、その翌年に高校を中退して音楽の旅に出た。インディーズ時代にリリースされた数々の作品たちは十代の若者が作ったとは思えないほどのクオリティー、そして完成された世界観がリスナーの心を鷲掴みにし、瞬く間にメジャーシーンに進出した。2000年の春、自分たちにも卒業式を開きたいと、僅か18歳の若さで日本武道館のステージに立ったことは、今でも語り継がれる伝説となった。しかし、その年の10月31日に、ギターの華月がこの世を去ったと同時に、Raphaelの夢も凍り付いたままだった。

2016年、華月の誕生日に行われた記念公演「蒼の邂逅」をもってRaphaelが活動を再開した。最後の全国ツアー「癒し小屋」と主催イベント「天使の檜舞台」を経て、華月の命日である10月31日、そして翌日の11月1日にZepp Tokyoにて「悠久の檜舞台」と題した解散公演を決行した。「白中夢」と「黒中夢」、二日間に渡って長年の思いが詰まった素敵なステージを見せ、19年の歴史に幕を下ろした。

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純白な幕のかかったZepp Tokyoのステージの奥にドラムとストリングスが陣取っていて、向かって右側にはかつて華月が愛用していたギター「青Jackson」が置かれている。会場の照明が落ちた瞬間、会場から割れんばかりの歓声が上がる。ピンクと緑のライトの中で、当日のライブをサポートするミュージシャンたちに続いて、HIRO(Dr.)、YUKITO(Ba.)、そしてYUKI(Vo.)が登場する。グランドファイナルに掲げたテーマ「黒中夢」通り、全員黒い衣装を纏い、さらにはメンバー全員が10代のバンド活動時と同じ髪型をしていたのがとても懐かしい。

一曲目の〈小夜曲〜悲愴〜〉で会場はRaphaelの壮麗な世界観に飲み込まれる。疾走感のあるHIROのドラミング、しっかりしたYUKITOのベースライン、力強いYUKIの歌声に、ゲストギタリストの咲人、夢人、刻の奏でる音色が絡まる。〈follow you〉〈人間不信〉〈症状1.潔癖症〉三曲続けてインディーズ時代の楽曲が演奏され、客席はヘドバンの嵐。

〈吟遊詩の涙〉でYUKIの洗練された歌声が優雅に旋律を紡ぎ、メロディに合わせて動く観客の手が赤い照明の中でまるで薔薇のよう。〈Sweet Romance〉で会場が一つになって大合唱し、〈「…」〜或る季節の鎮魂歌〜〉ではサポートギターのANCHANGの流れるような演奏で会場のテンションも上がる。聖堂の鐘が鳴り響き、〈花咲く命ある限り〉でYUKIが観客と一緒に頭を振る光景が印象的。

華月のメモリアルソング〈Ending〜華弦の月〜〉は当日特別なアレンジ、楽曲にストリングスを織り込み、全員のヘドバンが花のように咲き誇る。〈49〉では「eins zweidrei」YUKITOの叫びが響き渡り、YUKIがCO2ガスで客席を煽り、会場の熱気がさらに上がる。新しくアレンジされた〈症状3.XXX症〉は音色が豊かになり、YUKITOの気迫溢れるソロに咲人も負けじと激しいギターソロを放つ。突然暗転したステージに浮かぶ夜光模様はメンバーの衣装に施した特別仕様。再び点灯すると、会場の「発作」はまた続いた。

ステージが暗転したらYUKIが涙を流しながらこう言った。「この空の向こうまで届いただろうか、僕が歌うことはあなたたちの明日に繋がるだろうか、僕は、僕らはあなたたちを癒せているだろうか、最後の最後まで一秒たりとも目を背けずに一緒に音楽してください」〈僕と「僕」〉を歌っているときもその涙が止まることはなかった。楽曲が終わると、メンバーがステージを去り、残ったHIROが優しいピアノの音にドラムソロを絡ませる。

オルゴールの音色と共にグランドピアノが出現。白い衣装に着替えたメンバーとゲストギタリストのOmmyが登場。ステージを黄金色に染める〈秋風の狂詩曲〉はピアノとストリングスのアレンジを加えた、この日だけのスペシャルバージョン。「最後の最後に解散ライブのフラグを掲げたときに、どうすればRaphaelは解散のその瞬間まで進化しつづけることができるのか。アルバムのアレンジでもない、今日この場所でしかみんなと作ることができない、今日だけのRaphaelの特別な演奏をしたいと思ってる。そういう心構えで聞いてもらえると物足りなさとか違和感ではなく、今日ここにいる僕らにしか楽しむことのできないRaphaelが見えてくる。難しく考えなくていいから、そんな風に楽しんでください。」YUKIの言葉から今日のライブへの心意気が伺える。続けて演奏された〈拝啓ナーバス〉〈cadenza〉もピアノのアレンジが施され、観客の心の奥深くに刻み込まれた。

〈lost graduation〉についてYUKIはこう語った。「華月は16歳でこの歌を描いたのか。鳥肌が立ったよね、こいつ(華月)は天才だと思って、すごいな。それまでも何曲もRaphaelの4人で紡ぎだしていて、同じ年のメンバーだから羨望の眼差し、憧れに近い感じ。どの曲も愛してるんだけど、ちょっと質の違い…ほかの曲と違うものを感じた。lost graduationが生まれたときから、このバンドはいろんなものに出会うなという予感がしていた。2016年の今の時代に演奏してもきっとカッコ悪くないしダサくないと思うし、多くの世代の人たちに届くメッセージがここにあるんじゃないかな。今夜だけ、あなたたちのためだけのlost graduationを受け止めてください。」YUKIの合図で会場は青紫に染まり、HIROのドラムフィルで始まる〈lost graduation〉。この曲は美しくも切なく、とても16歳の少年の手によるものとは思えないほどのクオリティー。一筋の真っ白な光が舞台の上手に落とされ、けれどそこに華月の姿はない。このライブで「卒業」してしまうYUKITOは目を閉じ、その表情からは終わってほしくない気持ちが見える。YUKIもピアノを奏でながら華月の定位置を見つめ、HIROは涙を浮かべながらリズムを力強く刻む。楽曲に交じり会場からすすり泣く声が聞こえる。

メンバーがステージから去ってすぐアンコールの声が上がる。しばらくしてからYUKI、YUKITO、HIROがファーストアルバム《LILIAC》の衣装で再度ステージに上がり、それを目の当たりにした観客は黄色い声を上げる。三人とも無事当時の衣装を着れたことの喜びを交わしながら、ゲストギタリストの潤とANCHANGを迎え、〈Love story〜悠久の四重奏〜〉を奏でる。YUKIが華月のギターで自らギターソロ演奏し、「この半年ほど、昨日と今日のためにギターをがんばって練習してきたけど、やっぱり思い立って数か月じゃうまくいかないよね。他のギタリストさんみたいにわーって弾けたらいいのにと思うし、今もどうしても拙い演奏ばかりなんだけど、自己満足で終わってしまわないように、今日を経てこれから先の音楽活動の中でこのギターと共にどこまでもどこまでも成長していけたらなと思ってます。ギターをこれからもいっぱい練習したいと思ってます。応援よろしくお願いします。」と前向きに言った。

「誰かの分まで生きるって、心意気があっても本当はできない。心は一人に一つしかないし、命も一人に一つしかないから、失った誰かの分まで生きるんじゃなくて、その人との思い出だったり、その人が教えてくれたものと共に生きていくのが一番いいと思う。悲しみはやっぱり、一生癒えないと思う。苦しいしつらいし、未だに夢にうなされる。だけど少しずつ変化が起こっていて、数年前までは華月を失ってしまった瞬間のフラッシュバックで汗だくで飛び起きることが多かったけど、最近は華月が夢に出てきても楽しいのが多くて、決定的ななにかが必要なのかどうかじゃなくて、時間が解決してくれるものもあるのかなぁと。生きていく上で誰もが必ずいろんな感情をたくさん経験していく。苦しかったり寂しかったり悲しかったり、絶望する日もあるかもしれない、それでも数年後には踏ん張って前を向いて亀のごとくでもいいから歩いて進んでいったら、きっとどんなに苦しいことも悲しいこともいつか笑い話にできる日が来る。このさきも僕が先陣切って歩いていろんな壁を乗り越えて道を作っていきます。悲しいだけでは終わらないバンドにしませんか、一緒に。あなたたちとならできる、そう信じています。」この言葉を聞いた観客はまた涙する。

「これまでは活動休止だったでしょ?止めるってことはその間になにかをいじってしまうと変わってしまったり壊れてしまうかもしれないから、すべてを封印するしか方法なかった。だけどこの先は解散でしょ?これからはRaphaelがくれたたくさんの経験や育むことができた思いをみんなで語り合うことが許されるんじゃないかな。寂しいことばかりじゃない。(YUKITOを指差して)20年ぶりに親友に戻れるんだよ、すごいことだと思わない?音楽仲間である時間が長かったし、生きがいだったし、大好きなアーティストの一人だけど、この先は20年ぶりにまた一緒にいろんなバカやって、一緒に楽しめる元の友達に戻れる。誰の人生も止まらないの、失うものは何もない、だから勇気を持って今日はさよならしましょう。」続いて演奏されたのは〈eternal wish〜届かぬ君へ〜〉。スクリーンにバンドの昔の映像が流れ、懐かしさに浸りながら、華月のギターの音とYUKIの奏でる音色が絡み合い、ちょうどスクリーンには昔の二人が肩を並べた姿が映っていて、まるで時を超えた合奏のようだ。

泣き声と叫び声の中でメンバーはステージを去った。鳴りやまないアンコールの声に応え、前日同様怪盗「ユパン」に扮したYUKITOが真っ先に登場。「刑事ヒロンボ」に変身したHIROが〈NO! NO! WAR!!〉を歌いながらYUKITOとじゃれあう姿に笑みが零れる。YUKIとゲストギタリストも登場し、ステージが一気ににぎやかになった。

そんな和やかな雰囲気の中で〈タッチ〉が演奏され、観客もいつしか笑顔になり、まさに音楽と癒しを司る天使の名の通り会場を癒した。「18年ぐらい前の今日にリリースした気がするクリスマスソングを。2016年でみんなに送る一番早いクリスマスを(笑)これが一週間ぐらい前だとかっこいいんだけど」〈White Love Story〉、続けて〈Evergreen〉、最後に〈夢より素敵な〉をその日に集まったみんなに送った。

解散ライブを二日間支援してくれたゲストギタリスト―ANCHANG、咲人、夢人、潤、美月、Ommy、Tokky、刻―がそれぞれ言葉を述べ、特にメンバーと親交の深いTokkyは感極まって言葉を詰まらせるシーンも。やがて最後の時は訪れ、メンバー3人が会場に向けて最後の挨拶を。

HIRO:「こうして2016年にツアーをできて、アルバム3枚を発売することもできたし、思いつくこと全部やりました。本当に悔いはありません。さっきYUKIが言ったように失うものはなにもなくて、今日Raphaelは解散するけど、俺がRaphaelのHIROである事はこの先も変わらないし、続けていく音楽活動の中で、もっとかっこよくなって、大きいステージに立ちたいとも思っています。本当に幸せな2016年でした。」

YUKITO:「あの頃は、いつからか、気付けばメンバーの仲に歪みができていました。昔はみんなで馬鹿やって、あんなに笑い合えたのに。そんな微妙な関係になってしまった中で、華月が逝ってしまって、あのときから僕たちRaphaelの時間は止まったままでした。今年のこの活動は『ミュージシャンを辞める』と僕がYUKIに電話をかけたところから始まりました。それからレコーディングをして、ツアーをやって、ラジオをやって、林間学校もやって、昔に戻れたような気持ちになりました。本当に幸せな1年でした。華月もきっと笑っていると思います。僕は今日をもって音楽を、ミュージシャンを辞めますが、音楽を愛する気持ちは変わりません。だから、好きなアーティストがいればライブに行きます、CDも買います。ここにいるみなさんも、ファン、スタッフ、関係者、キャストの方々、みんな音楽が好きで、音楽を楽しみたいという気持ちで今日集まったのだと思います。その中でもRaphaelという、数ある音楽の中でもほんの一部のつながりで集まって。だから、僕もみなさんも音楽を愛し続ける限り、またどこかできっと出会う機会があるんだろうと思います。19年間、Raphaelを愛し続けてくれて本当にありがとうございました。」

YUKI:「Raphaelは本当にびっくりするほどのスピードで成長してしまったバンドで、会場が大きくなる度、CDの売上が伸びる度、代わりに色々なものを失いました。メンバーもいつしか顔を合わせるのも億劫になるような日々が続いたりして。だから2016年の活動は移動時間でも何でもできる限り3人でいるようにしました。出会った頃に戻れたように感じました。今日をもってRaphaelは解散します。最後のピースをはめるには、どうしても一人足りないけれど・・・僕たちはRaphaelの3/4であるということを誇りに思って、これからも生きていこうと思います。忘れないでください、あなたたちもRaphaelの恩人です。10時15分、今この瞬間をもってRaphaelは解散します。ありがとうございました。」

YUKIがRaphaelの解散を発表した瞬間、観客が終わりを惜しむように声を上げて泣いた。サポートメンバーがステージを離れたあと、まずHIROがRaphaelのドラマーとして最後の歓声を浴びて退場。続いてYUKIがまるでYUKITOを祝福するように、そしてミュージシャンとして最後の時間をかみ締めてくるように、彼を強く抱きしめた。2016年の全国ツアーが始まって以来、一秒でも長くステージにいられるようにと、最後に退場する役割をYUKITOに譲ったのだ。最後の最後にファンのみんなにもう一度華月の名前を呼んでもらうように、YUKIが華月のギターを抱えてステージの前に出た。YUKIが去ったあと一人残ったYUKITOは、堪えられなくなった涙が溢れ出し、観客が彼を呼ぶ声に混じって、時折彼が叫んだ感謝の言葉が聞こえる。今日が最後だと覚悟したはずなのに、終わってほしくない。そんな気持ちが溢れていたのか、熱い声援を受けてYUKITOがうずくまり泣いていた。それでも彼は勇気を振り絞って、会場に一礼をしてステージを後にした。

そして会場の照明が再び落ちると、スクリーンには今年のファンクラブスペシャルライブで収録した〈夢より素敵な〉のMVが流れてきた。順を追ってRaphaelの活動歴がスクリーンに映し出される。長い空白の時間があれど、他のバンドよりはるかに活動期間が短かったRaphael。ファンにとっては一つ一つの歴史がなによりも大切なのだろう。スクリーンに映る楽しそうなメンバーの姿を見ていると、いつしか会場の雰囲気が軽やかなものになり、映像が終わるまで会場に大合唱の声が止まなかった。最後の最後までRaphaelは夢より素敵な夢を見せてくれた。

(按此閱讀中文版

SETLIST
1. 小夜曲〜悲愴〜
2. follow you
3. 人間不信
4. 症状1.潔癖症
5. 吟遊詩の涙
6. Sweet Romance
7. 「…」〜或る季節の鎮魂歌〜
8. 花咲く命ある限り
9. Ending〜華弦の月〜
10. 49
11. 症状3.XXX症
12. 僕と「僕」
13. Time Lag (HIRO Drum Solo)
14. 秋風の狂詩曲
15. 拝啓ナーバス
16. Cadenza
17. lost graduation
EN1
18.Love story〜悠久の四重奏〜
19.eternal wish〜届かぬ君へ〜
EN2
20. NO! NO! WAR! (HIRO)
21.タッチ
22.White Love Story
23.Evergreen
24.夢より素敵な

VROCKHK
記事:黑尾巴、ALICE
翻訳:百足
写真:外林健太

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