レトロフューチャーの国のアリスーーALICE IN MENSWEARインタビュー(日本語)
michi.(S.Q.F、元MASCHERA)、KOJI(元ALvino、La’cryma Christi)が新グループ「ALICE IN MENSWEAR」を結成された。「不思議の国のアリス」、「スティームパンク」といった2つの元素を融合したことから、今年のビジュアル系注目株になりそうな予感。
インタビューで、グループ結成のきっかけから音楽風格、グループの世界観など、詳しくお話ていただいた。
ALICE IN MENSWAREを結成するきっかけを教えてください。
KOJI:michi.とは同じ関西出身で東京へ出てくるタイミングも一緒だったから若い頃はよく遊びに行ったり、MASCHERAのメンバーとも飲みに行ったりと交流はありました。
デビューが決まってからは会う機会がほとんどなくなりましたが、雑誌とかでMASCHERAの活躍を見たりして元気な姿は見ていました。
3、4年程前にイベントライブで再会してからぐっと距離が縮まってmichi.主催のCaramel Voxというアコースティックライブや、S.Q.Fのライブにゲスト参加したりしました。
プライベートでも会う事が多くなって音楽の話から趣味のゲームやアニメの話、悩み事など色々とお互いの話をよくしました。
自分がやっていたALvinoが2018/3/17で活動が止まったのもあり、ボーカリスト探しをしていたんですが、michi.もS.Q.Fを休もうかと思っている事を打ち明けてくれて、だったら一緒に音楽を作っていこうよって自分の方から誘いました。
michi.:実は2018年の春くらいにはS.Q.Fを休止させようかどうか悩み始めていたんですけど、デリケートな問題だけに誰にも相談できず一人で悩んでる時間が続きました。そして7月くらいに結論を出したときに、昔から親交があったKOJIに打ち明けたところ「一緒にやらないか」と言ってもらったのが始まりです。
KOJIはもっと早く声を掛けてくれようとしたみたいですが、S.Q.Fとして活動している自分に迷惑が掛かるかもしれないと思うとなかなか切り出せなかったようです。そういう意味では何かに導かれたようなタイミングだったのかもしれません。
この誘いを受けたとき、とてもワクワクした衝動に駆られました。また、ごく自然にKOJIのギターで歌う自分が想像できたこともあり、一緒にやっていこうという決断をしました。
続いて、それぞれ一番素敵なところがどこだと思われますか?
michi.:普段の物腰の柔らかさとは裏腹にとても強いプライドと信念がある。そしてクレバーでスマート。クリエイティブな才能と強力なリーダーシップを兼ね備えているので安心してプロジェクトに打ち込めます。
KOJI:正直な所ですね。彼の人間性は嘘やごまかしがないので、音楽を作るという共同作業をする時に余計な回り道をせずに、確実に結果にまっすぐ突き進めるのは大事な事だと思っています。
二人が出会った場所をまだ覚えていますか?その時の第一印象はいかがでしたか?長い年月を経てその印象が変わりましたか?
KOJI:出会ったその日っていうのは忘れちゃいました。だけど昔はmichi.はステージでは寡黙だけど、プライベートで見せる顔はまた違ってすごいフレンドリーでした。その印象は全然変わってなくて、でも今はステージでもフレンドリーな面を出す事もあるのは変わったなって思います。
michi.:ずいぶん昔のことなのでさすがに細かいシチュエーションは忘れちゃいましたね。ただ昔は若いミュージシャンってギラギラ尖ってる奴が多かったけれど、KOJIは当時から柔らかい印象でした。今はそのときよりも内面から溢れる力強さを感じます。ってあのときは猫被ってただけなのかな?(笑)
名前と発表した「Lost Child」から見ると、ユニットの世界観が文学作品『不思議の国のアリス』に繋がっているではありませんか。しかし「不思議の国」という部分が「MENSWARE」に変えたところが、二人が作り上げたいのは一体どんな世界観になりますか?どこからこの発想を得ましたか?
KOJI:michi.が「不思議の国のアリス」というテーマを提示してくれました。人は昔から心の中で悩み苦しむ中で精神的に迷子になってしまって、何かに救いを求める所があると思っています。自分も昔そうなった時に救ってくれたのが音楽だったので、自分の人生は自分を救ってくれた音楽のために捧げたいと思ってギターを弾いています。ALICE IN MENSWEARのテーマは自分の人生のテーマとも重なる部分があって、自分とmichi.が生み出す音楽で沢山の人たちの心の救いになればと強く思っています。
michi.:「不思議の国のアリス」は多くの人々にとって普遍的なファンタジーの象徴であり幼年期にみた夢への憧れだと思っています。そして人は大人になるにつれ日々追いかけてくる時間や現実に苛まれるうちに道標を見失い漂流していく。大人とは肉体的な強さを手に入れる反面、そういった得体の知れない孤独と戦わなくてはいけない場面も多くなる。その脆弱さを少しでも覆い隠すためにまるで鎧でも纏うかのよう背伸びした服装で身を固める。誰もが夢と現実の間でさまよう漂流者であり、自分達もそうなんだという思いを作品に含ませることで、少しでも痛みや焦燥感を分かち合える喜びを感じられたらという願いを込めてこのユニット名を考案しました。
発表したアーティスト写真もミュージカル映像などから見ると、ALICE IN MENSWAREのビジュアルスタイルが「スティームパンク」という風格が大きく占められていることだと感じています。この風格にしたに理由がありませんか?
KOJI:「スティームパンク」のテーマもmichi.が提案してくれて決まりました。自分はその時に初めて「スティームパンク」という言葉を知ったんですが、まさに自分が好きな世界観ともぴったりでテンションが上がりました。宮崎駿監督の映画の世界観や、レトロ未来なアニメとかも大好きで、ビジュアルを「スティームパンク」にするとインパクトがあるし絶対にやりたいと思いました。映画The Matrixも大好きなんですが、アリスも出てくるし続編に出てくるザイオンという地下にある街はまさに「スティームパンク」。The Matrix3部作を改めて見直しました。
michi.:「スティームパンク」が持つ特徴の一つに「レトロフューチャー」があります。これが時代の狭間にさまよう漂流者にぴったりだと思いました。また「不思議の国のアリス」の中では「時間」や「時計」が大きな意味を持ちます。これらの理由から、これ以上自分たちにマッチしたジャンルは他に無いであろう感じました。なので世界観を表現するにあたり重要なファクターであるファッションに「スティームパンク」を選択しました。
それぞれの造形にどんなコンセプトが込められていますか?「アリス」と「スティームパンク」、どちらの元素が大事だと思いますか?その理由は?
KOJI:「アリス」は歌詞や音楽の方で表現して、ビジュアルが「スティームパンク」と棲み分けられていてどちらも大切な要素です。「スティームパンク」が題材になっている作品の多くには美しさとか怪しさとかの雰囲気の音楽もセットで表現されています。ステージに立った時に見に来ている人たちにもその見た目とその世界観から放たれる美しくも怪しい音楽を耳にして、まるで作品を見ているかのようなライブをしたいって思っています。
michi.:KOJIが言った通りですね。どちらも大事な要素です。「スティームパンク」はそもそも「第一次産業革命がそのまま進化を続けていたなら」という「if(もしも)」の世界です。アリスがさまよい込んだのもワンダーランドではなく、もしかしたら蒸気機関と歯車と魔術の世界だったかもしれません。
創作において、ボーカルのmichiが作詞、ギターのKOJIが作曲でそれぞれの役割になりますか?相手にアドバイスを求めるときがありますか?
michi.:作詞についてはほぼ一任されていますね。ですがヴォーカルディレクション(レコーディング時、より良いテイクを引き出すための監督業務)ではかなり心強い意見を貰います。自分では気づいていない魅力をさらに導きだしてくれる。これまでもかなりの経験値を積んで来たつもりでしたが、まだまだ自分の可能性を掘り起こしてくれる大切な存在です。
KOJI:曲を作る前にめちゃめちゃアドバイス求めます。どういう曲を次作ればいいか、雰囲気はどんな感じ?とか。自分は曲を作る時に頭の中に浮かぶ映像を追っかけてコードやメロディを考える事が多くて、頭の中に映像が浮かんでない時にギターを手にしても素敵な曲は生まれてこないんです。だから映像が浮かぶまでmichi.とディスカッションして、頭に浮かんでしまえば一気に曲を仕上げる感じですね。
続いて、それぞれ一番こだわっている部分はどこですか?
KOJI:音のクオリティですね。長くギターを弾いてきて自分なりに掴んだ事があって、それは大事なのは「音色」という事です。音色が良ければ普通のフレーズも美しく人に届くし、またその音色を聴きたくなる。もちろん美しい音色にプラスして素晴らしいメロディや和音もとても大事な事だと思っています。でも音色が良くなければ素晴らしいメロディなのにまた聴きたいとは思ってもらえないと思っています。人の心を揺さぶるのは音色。だからとてもこだわっています。
michi.:「KOJIの紡ぎだす美しい旋律に対して如何に美しい言葉を乗せられるか」ですね。それは自然と「歌声としての美しい音色」という意味にもつながります。「流れる一筋の光の残像」のような。そして上辺だけの美しさだけでなく、その中にしっかりと伝えたいメッセージを内包させる。この作業がまるで高難度なパズルを解読しているようで実に楽しいひとときなんです。「不思議の国のアリス」の作者、ルイス・キャロルもこうした言葉遊びの楽しみに日々酔いしれていたんだろうな、なんて思いながら。
「Lost Child」のミュージカル映像ショットバージョンを公開していますが、フルバージョンを公開する予定はありますか?
KOJI:フルバージョン、準備しています。最高の出来栄えなので香港や中国の皆様にもぜひ見てもらいたいって思っています。
この曲の聴き方、もしくはそれぞれ大事なポイントを教えてください。
KOJI:イントロの美しい世界観から怪しいAメロに入るあたりは気に入っていますし、サビの切ない雰囲気も気に入っています。音楽に身を任せて聴いてみるとこの世界観にぐっと入っていけると思います。
michi.:ALICE IN MENSWAREの始動にふさわしい曲です。「アリス」と「スティームパンク」の世界が高次元で融合されています。音も歌詞も、自身の「過去、現在、未来」に訴えかける魔法が掛けられているかのような錯覚に陥ることでしょう。一見ファンタジーの表層で覆われていますが歌っているのは内面的な精神世界です。誰しもに心当たりがありつつも、受け取り方は自身が背負ってきた人生や経験との化学反応もあり様々だと思います。この曲を聴き終わった後は映画を観た後のように、友人や大切な人と語り合って欲しいですね。
今後の音源リリース予定はありますか?少し情報を披露していただけますか?
michi.:もちろんです。「Lost Child」に負けない発明品がたくさん生まれています。期待していてください。
KOJI:音源のリリースを目指して日々曲作りやレコーディングに打ち込んでいます。自分とmichi.のタッグは始めてみて実感してるんですが、めちゃくちゃ強力です。聴いた人を驚かせるような曲が沢山出来てきているので、音源がリリースされた時には香港と中国の皆様にも聴いてもらいたいって思っています。
初出演が2019年4月12日新宿ReNYに開催する「Wonderland For The Lost Children」です。正式メンバーが二人ですが、ライブだとサポートミュージシャンを招きますか?毎回変わりますか?
KOJI:2人で活動していくのでライブだとサポートミュージシャンにお願いする事になります。ALICE IN MENSWEARの音楽を最高の形でステージから届けたいのでサポートメンバーは固定で考えています。
VROCKHK読者に一言メッセージお願いします。
michi.:最後まで読んでくれてありがとうございました。芸術は時間と空間を越える魔法です。今は少し遠い場所からだけど、それでもこうして皆さんと繋がるきっかけを貰えました。今よりもっと皆さんに近づけるよう、素敵な作品を造り続けます。皆さんももっとALICE IN MENSWEARに近づいてください。ワンダーランドへようこそ。
KOJI:您好、很高興認識你。我叫ALICE IN MENSWEAR KOJI。実は香港や中国にはまだ行った事がないんだけど、いつか行けたらって思ってます。香港でライブをやった事がある友達にも香港の素晴らしさをよく聞いているので、実際に行ける日の事を楽しみにしています。ALICE IN MENSWEARというユニットはビジュアルや世界観など国境を超えていけると信じているので1度香港や中国の皆様にもYouTubeで観て、聴いてもらいたいです。いいな!って思ったら友達にも勧めてくださいね。
このインタビューの中国語バージョンは『VROCKHK』FREEPAPER VOL.10に収録されました。